©︎Keisuke Mitsumoto
水野蒼生はヨーロッパで勉強する仲間
僕も今年で24歳なので同世代が増えてきましたが、ドイツに来た当時の19歳の頃はほとんど全員年上でした。あの頃の先輩たちの歳になってるんだなーと思うと時間が経つのが早くて驚きます。
僕は東京音大に1年間通って退学してドイツに来たんですが、東京音大を半年で退学してオーストリアに留学した指揮者と最近知り合いました。
そうしたらまさかの同い年で、東京音大の同期!
彼の方が半年早かったですが、あまりにも境遇が似ているので色々と話をきいてみたらとてもおもしろい感性をしていて
何よりも”日本のクラシックを盛り上げたい!”という想いが強くて斬新なアイデアをたくさん持っている人でした。
”新卒を捨ててフリーランスになります!”
的なことが流行っていましたが
大学そっこーでやめていきなり海外へ飛び出します!
って指揮者の方がもっとおもしろくないですか。
話をしていたら彼の人生があまりにもドラマチックだったので、インタビュー形式で彼の魅力を伝えていったみたいと思います。
目次
水野蒼生のプロフィール(2019年現在)
1994年生まれ。 幼少期からピアノを、12歳でヴァイオリンを始める。
2009年から2011年までの3年間、夏に金沢で催された井上道義氏の指揮者講習会に参加し、 そこで初めての指揮の手ほどきを受ける。
2011年には同講習会の優秀者に選ばれリレーコンサートに出演し、IMA弦楽アンサンブルを指揮する。
2013年夏にオーストリア国立モーツァルテウム音楽大学にて催されるサマーアカデミーに参加。 指揮をペーター・ギュルケ氏に師事。ディプロマを会得。
2014年秋からザルツブルク モーツァルテウム音楽大学に入学。オーケストラ指揮と合唱指揮を専攻。
2015年夏にザルツブルク州立歌劇場のカペルマイスター:エイドリアン・ケリーの下で 副指揮者としてブリテンのオペラ「ノアの洪水」を指揮。
2016年にはザルツブルクの劇場「Oper im Ber Festival」にてモーツァルトのオペラ「魔笛」を3公演にわたり指揮、好評を博す。
2016年秋よりブラウナウ・ジンバッハ・楽友協会の副指揮者に就任。
これまでにオーケストラ指揮をハンス・グラーフ、ブルノ・ヴァイル各氏に、現代音楽指揮をヨハネス・カリツケ氏に、合唱指揮をカール・カンパー氏に師事。
2016年2月、ライブハウスで大音量で楽しむピアノリサイタル「東京ピアノ爆団」をプロデュース。
同世代の3人のピアニストのリレー形式のリサイタルと水野自身のオーケストラ楽曲のみでのDJプレイが話題を呼んだ。
2017年夏にはクラシック界の新しいアイコンとなる若手室内オーケストラ、「O.E.T(オーケストラ・アンサンブル・東京)」をクラウドファンディングで立ち上げ、結成記念公演では400人超を動員。大盛況へと導いた。
2018年ドイツ・グラモフォンより、の膨大なカタログの中から選りすぐりの名演をセレクトし、自身の手でミックスした前代未聞のアルバム『Millennials -We Will Classic You-』をリリース
MILLENNIALS -WE WILL CLASSIC YOU-
2018年秋ドイツ・グラモフォン主催のクラブイベント「Yellow Lounge in TOKYO」のオフィシャル・キュレーターに就任。
2019年ラフォルジュルネ東京でのクラシカルDJで話題に。
水野蒼生のYouTube Vlog
水野蒼生が指揮者を志すまで
のびのび音楽をしていた幼少期
-子どもの頃から指揮者を目指して勉強してたの?
蒼生
子どもの頃からピアノは一応やっていたけど全然本気でってわけじゃなくて、小学生の頃はまじで恐竜博士になりたかった笑 まじで化石発掘に行ったりしてたし、留学する気満々だった笑
ピアノは母園の幼稚園の園長先生にずっと習っていたけどバイエルとかツェルニーとかやるのが嫌すぎて、
ベートーヴェンとかモーツァルトの"どうしても弾きたい!"って曲を1年ぐらいずーっと練習してる感じだった。
当時は楽譜もちゃんと読めなかったからほぼ耳コピ。
まさかのヴァイオリンをもらう事件
-いつから本気になったの?
蒼生
中学1年の頃に転機があったんだよね。
ある日大雨が降っていて傘がなかったから、いつもピアノを教わっている幼稚園の前を通りかかったら園長先生がいて、雨宿りさせてもらいに入った。
それで園長室に入ったらヴァイオリンが置いてあって、先生にいきなり
それあなたにあげるわよ(どん!)
って言われてまじでヴァイオリンをもらって帰ってきたw
これは用意してたとかじゃなくて、本当にいらなかったらしい。笑
そんで園長先生がヴァイオリンの先生を紹介してくれて、ヴァイオリンを始めたらドはまりして、ピアノも真面目に取り組むようになって、クラシック音楽がどんどん好きになった。
それでヴァイオリンを始めて3ヵ月目で
ヴァイオリニストにおれはなる!(どん!)
って言ってたんだけど、始めたのが遅すぎるから諦めろと言われて断念。この時に
あー、じゃあ指揮者になろっかなー。
くらいには考えてた。
©︎Keisuke Mitsumoto
水野蒼生は中学生の時は吹奏楽部でフルートを担当
-中学では部活とかしてた?
蒼生
中学では先生に勧誘されて吹奏楽部に入部して、家には祖父が母に買った70年ものくらいのフルートがあったら、フルートをやることにした。
指揮はその時に吹奏楽部の練習だったり合唱コンクールでしたくらいかな。
フルートで音高にいこうかとも考えたけど、夏のコンクールの練習が過酷すぎてまさかのテニスひじになって、本当に吹けなくなるくらいに腕を壊してしまった。
フルート吹いてテニスひじってなんだよw って感じだったけど、その時は3ヵ月くらいヴァイオリンも弾けなくて。
音高への進学も考えたけどそのまま一般高校に行くことにした。
水野の井上道義先生との出会い
-初めての指揮のレッスンは?
蒼生
ずっと指揮者の井上道義先生がすきだったんだけど、高1の夏に彼の初めての講習会が開催されることになって
まあどうせ音大生とか向けだろ…
って思って要項の参加資格を見てみたら
・15歳以上でツェルニー以上のピアノが弾けること
だったんだよね。
え、おれ15になったばっかじゃん!!
ってことで申し込んだら合格して参加できることになった。
他の参加者は全員20歳以上で、音大生だったりそれ以上の人だったりで15歳の子どもは自分だけ。
一番指揮が下手な自分にも井上先生はすごく親切にレッスンしてくださって
「本当は君くらいの年齢の子たちに一番来てほしかった」
って声をかけてくださったのがうれしかったなあ。
いきなりフルオーケストラでベートーヴェンの序曲「コリオラン」とブラームスの交響曲第2番を振らせてもらって、レッスンも素晴らしくて本当に勉強になった。
講習では、金沢のプロオーケストラであるオーケストラアンサンブル金沢を指揮させていただけて本当にいい経験だった。
高2高3と毎年講習会に参加して、高3の時は修了演奏会の指揮にも選んでいただけたんだよね。
本番で緊張しすぎて初っ端を思い切り振り間違えて、オーケストラが入れなかったというミスして後でめっちゃ怒られた。笑
15歳の頃、井上道義先生と。
トリフォニーホール・ジュニア・オーケストラに入団
-オーケストラの経験は?
蒼生
高校1年の頃にトリフォニーホール・ジュニア・オーケストラっていうところのオーディションをヴァイオリンで受けて合格したから、3年間みっちりオーケストラの勉強ができた。
このジュニアオケは本当に素晴らしくて、各楽器の講師はみんな新日本フィルハーモニー交響楽団のみなさんで、指揮は松尾葉子さん。
練習はすみだトリフォニーホールでやるし、団員はオーディションで選ばれていてハイレベルだったから素晴らしい経験で、オーケストラを本当に大好きになったよ。
トリフォニーホール・ジュニア・オーケストラには、他にはない特徴があります。
まず、音楽監督・松尾葉子氏をはじめ、新日本フィルハーモニー交響楽団のメンバーなど、プロの音楽家の指導を受け、その音楽性にじかにふれながら、技術力・表現力を養うことができること。次に、音響の優れたすみだトリフォニーホールを主な練習会場とすること。
このような最適な環境の中で、子どもたちは仲間とともに演奏する喜びを感じながら、真剣に音楽に向き合っています。この活動は、子どもたちが音楽面においても精神面においても成長していく場であるとともに、地域に豊かな音楽文化が根づくための大きな一歩となるものです。
ジュニオケについて↓
オーケストラについて丨トリフォニーホール・ジュニア・オーケストラ丨すみだトリフォニーホール
水野蒼生が東京音大に進学した理由
-なんで東京音大にしたの?
蒼生
井上先生の講習会に講師でいらしていた東京音大系の先生方に東京音大を勧められて、もうそこに進学するって感じになってた。笑
水野蒼生が東京音大を半年で退学したわけ
-東京音大をやめたのはなぜ?
蒼生
何も隠さずにいうと、教授とけんかしたからだね。
考えが合わなかったし理解ができなかった。10代をここで過ごすのはもったいないと思った。
「20歳まで考えてみたら考えが変わるかもよ?」
と説得されたこともあったけど、
少しでも時間が経てば経つほど、どんどん大胆な動きができなくなるって思った。
退学届を出した瞬間にドイツ語学校の申し込みに行った。笑
ザルツブルクの音楽アカデミーへ
-どういった流れでザルツブルクに行くことに?
蒼生
大学やめてすぐ留学しようと思って何かヨーロッパの夏の講習会ないかなって探していたら
ザルツブルクのモーツァルテウムの講習会を教えてもらったんだよね。
参加にはビデオ審査があって、
どーすっかなー
ってなってたからとりあえずラノッキオっていうオーケストラを振ったときの映像を送ったら通った笑
ラノッキオ・アンサンブル主宰
-それはどんなオーケストラだったの?
蒼生
ラノッキオ・アンサンブル
結成は2011年の一月。
当時17歳のトリフォニーホールジュニアオーケストラのメンバー有志での活動だったが、それぞれのメンバーが音大に進学し、その後は首都圏の音大生有志を中心に活動する学生オーケストラとしての活動が定着した。
結成以来10回を越える公演を企画、開催。
室内楽とオーケストラを同時に楽しめる公演や美大生とのコラボレーションなど、音楽の新しい楽しみ方を提案してきた。
2011年7月、同オーケストラより木管五重奏が河口湖音楽祭に出演。
2013年3月に開いた東北復興チャリティコンサートでは、2012年東京音楽コンクールで優勝及び聴衆賞を受賞したピアニスト、高橋優介をソリストに迎えラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を熱演し、300人を超える聴衆を魅了。
2015年夏にはトリフォニーホールで催された新日フィルによる「夏休みコンサート」の前座としてフラッシュモブを披露。
こんな感じ。笑
この時の同い年のピアニストで東京音楽コンクール優勝者の高橋優介と共演したラフマニノフのピアノ協奏曲第2番で審査通ったのはうれしかったなー。
当時の演奏。これはシェヘラザードだけど。笑
ちなみにPVもあります。
この作曲の”Blaumann Wasserfeld”っていうのは蒼生水野をドイツ語にしただけ。笑
モーツァルテウムの講習会で出会う仲間達
-講習会はどうだった?
蒼生
とにかくそこでたくさん色んな国の指揮の仲間ができたことと、モーツァルテウムの指揮科の人達と知り合えたのが大きかったかな。
※講習会の詳しい内容は別のインタビューに載っているのでこちらをどうぞ
講習会の様子。
水野蒼生ヨーロッパ受験編
第2章って感じになるヨーロッパでの受験について聞いてみようと思います。
-どこを受験したの?
蒼生
ワイマールとザルツブルクの2校だね。
ドイツの最難関 ワイマール音大の指揮科の受験
-ワイマールの指揮科はレベルが高いと聞くけど試験はどんな感じだった?
蒼生
ワイマールの受験は100人ぐらいが世界中から受けにきてすごいハイレベル。
まず一次試験はオーケストラの指揮で、兵士の物語とベートーヴェンの交響曲第1番。
一次は通過。
2次はピアノ。
バッハ:平均律の1巻のc mollのプレリュードとフーガ
ベートーヴェン:ピアノソナタ第5番全楽章
ブラームス:ラプソディ2番
バルトーク:ルーマニアンダンス全曲
っていうほぼピアノ科の試験ってレベルのものを弾いた。笑
それが終わったらコレペティという伴奏の試験があって
魔笛の1幕フィナーレを全て弾き歌いするという鬼畜な課題。これはいまだに歌える。笑
その後さらにハイドンの天地創造のフィナーレを全て弾き歌い。
それが終わったら次はピアノの初見演奏。
それがなんとリヒャルト・シュトラウスの薔薇の騎士w
でもこれがうまくいかなくて不合格だった。
山は死んでも受験は死なない
-ワイマールの受験からザルツブルクの受験まではどうやって過ごしてたの?
蒼生
親の友人がチューリヒの歌劇場の打楽器奏者で、その人のところにお世話になってた。
その時ワイマールがだめだったことですごい落ち込んでたんだよね。
でもその人は湖とか滝に連れて行ってくれたり、オペラをたくさん見せてくれたりしてた。
それでチューリヒ滞在最後の週末に
”アオイ!山にいこう!靴は何を持ってる?”
って聞かれて
”スニーカー1足ならあるけど…”
って言ったら2秒くらい考えてから
”Okay!!haha”
って言われて山登りだーと思って連れて行かされたのが
ガチのスイスアルプスwww
※これは実際の写真
こんな幅1mしかなくて横は崖みたいなところスニーカーで、ご丁寧にザルツの受験でやる魔笛のスコアをいれたリュックをしょいながら登ってさ笑
まじでこんな感じ(これは自分で撮った写真)
それで命からがら山頂まで登ってきてこの景色を見た時にさ
山は死んでも受験は死なない!!!
って気が付いて、それまでワイマールのことで落ち込んでたこととかザルツブルクの受験への不安が一気に吹き飛んだんだよね。
だって受験落ちても死なないもん笑
命がけだったけど本当に登ってよかったしこの景色を見られてよかった。
ザルツブルク、モーツァルテウムの指揮科の受験
-無事生還できたから次はザルツブルクにいけたわけね笑 ザルツの受験はどんな感じだった?
蒼生
山登りから10日後にザルツブルクの受験で、指揮科の仲間から
「今回入学できる人数は最大1人らしい。」
って聞いてて受験生は40人くらいいた。
1次試験ではまず激ムズの音楽理論と楽曲分析の課題が出され、これの点数の上位50%が2次へ進む。
そして2次はまず少しだけ面接。
ワイマールでも面接があって
「ドイツ語はどうだ?」
って聞かれたんだけど2校で全然違った。笑
ワイマール
ー「ドイツ語どうだ?」
蒼生「日本でB1まで取ってきました。」
ー「それじゃあ全然不十分だ。入学までにB2までとれるのか?」
蒼生「がんばります。」
ー「うむ。」
ザルツ
ー「ドイツ語はどう?」
蒼生「日本でB1まで取ってきました。がんばります。」
ー「Wow!!B1!?まじで!?素晴らしい!!(拍手喝采)」
蒼生「…」
って感じ。笑
※B1は英検などでいう2級レベルで社会生活での身近な話題について理解し、自分の意思とその理由を簡単に説明できるという感じ。
ザルツブルクはインターナショナルで、英語でなんとかなっちゃうっていうところがあるから学生も受験生もちゃんとドイツ語を勉強しないんだよねー。
アカデミーのこともだけどラノッキオがあったから今があるって思うしすべてはつながっているんだなって思う。
そして3次試験は2台ピアノを相手にモーツァルトの交響曲を指揮する課題。
そして最終の4次審査でコレペティという伴奏課題。
ブラームスのラプソディとまたもや魔笛の一幕フィナーレの吹き歌い。
合唱指揮も併願していたからそのまま試験へいって、そっちはただ合唱を1度指揮しただった。
それから部屋に呼び出され
「両方合格だ!」って握手されて本当に涙が出てきた。
結果的に合格者は学部と大学院合わせて2人で、倍率は20倍だった。受かってよかった…。
水野蒼生の受験記ブログ
水野蒼生の受験生活50日間を毎日綴ったブログがあるのでそちらも読んでみてください。
水野蒼生 留学生活編
2/40人という倍率20倍の試験を突破してザルツブルクに留学することに決まった蒼生。こちらでの活動や勉強について聞いていきます。
ヨーロッパは学生と教授が対等
-日本の音大との1番の違いはなんだと思う?
蒼生
良くも悪くもとにかく自由なことかな。カリキュラムの制約もほとんどないし。
何より学生と教授が対等っていうことが大きな違いで、私生活だったり生活態度に干渉されることは一切ないし、意見を言うことだって当たり前。
気に入らないアシスタントを変えてくれって学校に抗議するのだって普通だし、先生を変えるのだって普通のこと。
学生に自治権があるし、自分の学生生活を良くしようと動く権利があるって感じ。
ヨーロッパでは若いことのアドバンテージの大きい
-ヨーロッパに早くきてよかったことって何?
蒼生
やっぱり若い=伸びしろがある
っていうところがあるから、いい演奏してさらに若いとかなり注目されるという感じがする。
それにほとんどの外国人は大学をでてから来るから20歳だったというのは目立ったね。
ノアの洪水 の指揮のアシスタント
-ザルツブルクでの活動はどんな感じ?
蒼生
学生生活は忙しいけど、1番大きかったのは1年生の時に教授の推薦で、子どものためのオペラ「ノアの洪水」のアシスタントをやらせてもらったことかな。
指揮はザルツブルクの劇場のカペルマイスター(楽長)さんだった。
子どものためのプロジェクトで、半分が子どもで半分がプロのオーケストラ。仕事のほとんどは子どものお世話だったけど笑
いつもたくさんの子どもを従えてカフェとかに行ってたから、街でちょっとした有名人になってたw
それでその公演はアシスタントだったんだけど、
舞台の構造上、本指揮者とは別に合唱とソロに指揮が必要だったからそちらを振らせてもらってすごくいい経験になった。
オーケストラ指導の仕事
-定期的な仕事とかはあるの?
蒼生
去年の秋ごろからBraunauというザルツブルクから1時間くらいの町のアマチュアオーケストラで毎週金曜日に弦楽の指導をさせてもらってるよ。
日本語に訳すと
ブラウナウ・シンバッハ楽友協会
なんかすごいっしょ笑
オーストリアの田舎だから、ドイツ語がとんでもなくひどい訛りで最初は全然わからなかったけど、不思議なことに一年間で聞き取れるようになるもんなんだよなー
”ほら!ここの弓順はこうだって言ったでしょ!そこも遅れてるよ!”
みたいに毎週ドイツ語で何時間もリハーサルするのは色んな意味ですごくいい勉強になってるし、おじいちゃんおばあちゃん達とすごい仲良しになった。笑
外国人なのにこうやって地域での仕事をさせてもらえて本当に幸せだと思う。
水野蒼生の日本での活動
ライブハウスでのピアノリサイタル ピアノ爆団
-日本での活動は?
蒼生
もちろん拠点はヨーロッパに置いているんだけど、日本でも積極的に活動していきたいから毎年帰って色んな企画をやっててこの前は
東京ピアノ爆団
っていう企画をした。
クラシックは正装してかしこまってシーンとしてて敷居が高いから同世代が聴いてくれない。
だから
・ライブハウスで
・マイク使って爆音で
・ミラーボールとかガンガン回しながら
・酒を飲みながら
・でもやる曲は超クラシック
っていうコンセプトでとにかく普段クラシックを聴かない層にも聴いてもらえるようなライブをやった。
その時のことはブログ記事にしてる。
・人と音楽をより近づける為に
・音楽の楽しみ方を広げる為に
・何より気持ちいい響きの為に「ライブハウスでのピアノリサイタル」
大爆音で鳴り響く渾身のスクリャービンやドビュッシー、プロコフィエフを、ミラーボールが回る中で100人を越す老若男女のお客さん達と3人のピアニストが共有した。誰もが自然体でお酒を口にしながら音楽と共に揺れていた。
輸入されてきた高級趣向の文化っていうのは難しい。本質より先に形式が邪魔をする。
本場と呼ばれる欧州ではお国の文化だから勿論根付いているし、変なプライドも嫌悪感も無い。
日本では敷居の高さや貴族的なイメージが先に来てしまうから、ちょっと興味を持ってる音楽ファンも「何から手をつけていいか分からない」状態になってしまう。
それを取っ払わないとこの国に俺の大好きな最高にクールで激エモなクラシック音楽の未来は無ぇ!!!って高校生だった蒼生少年は既に薄々思っていたんだよね。
このライブは大成功で、この間の2月にやった第2回のライブもすごく喜んでもらえたよ。クラシックの作品のみでDJもした!
©︎Hirokazu Takahashi
その時の音源はこちら↓
東京ピアノ爆団 ORCHESTRA MIX 2016/AOI by aoim94 | Free Listening on SoundCloud
クラシックをもっと多くの人へ、多くの層へ
-日本でここまで活動しようと思った理由は?
蒼生
まずはクラシック音楽の聴衆の高齢化が大きな問題だと思うんだよね。
”演奏会に足を運ぶのは高齢者ばかりで、次の世代からは来なくなってしまうのではないか?”って何十年も前から言われてるけどいまだにたくさんの人が聴いている。
ということは
”クラシックは老後に聴くか~。”
という感じになっているということ。年齢を重ねてきて聴き始める音楽になっている。
そうじゃない。
クラシックは若い人にほど聴いてほしい音楽で、歳を取ってから初めて良さを知るのはもったいなさすぎる!!
それでさ、ヨーロッパでは子どものためのコンサートやファミリーコンサートとか本当にたくさんの取り組みがされているから
ヨーロッパで外国人の自分が変えることはないと思った。
でも日本にとってクラシック音楽は輸入された文化だからまだまだ変革する余地がある。
東京は世界有数のオーケストラ都市
-日本のクラシック界の変えるべき点は?
蒼生
東京にはプロのオーケストラが9個もあって毎日様々な演奏会がある世界有数の音楽都市なんだよね。これは数で言えばウィーン並み。
でもクラシックの演奏会を聴きに行くのが音楽をやっている人ばかりだったりして、内輪で盛り上がっていることがとても残念。
これじゃあ市場が広がっていくわけはない。
もっとクラシックを聴く新しい客層を増やしていかないと未来はない。
クラシックの、他の音楽のライブとの差
蒼生
高校時代バンドをやっていていたし、ロック・ジャズ様々なジャンルの音楽の友達がいるから色んなライブに行くんだけど、いつも感じるのは
クラシックのコンサートとの盛り上がりの差
クラシックは数百年間ずっと演奏され続け、聴かれ続けて生き残ってきたモンスターミュージックなんだから、それが現代の若者にもうけないわけがないと思うんだよね。
敷居の高さやイメージで良さを知る機会がないのがすごく残念。
本来はサブカルチャーの商業音楽がメジャーの座を奪ってしまった今、クラシックを再びその場に戻したいんだよ。
©︎Keisuke Mitsumoto
Orchestra Ensemble Tokyo
-それで立ち上げたのが今回のO.E.Tの企画なんだね。
蒼生
そうだね。ピアノ爆団の活動にもすごく手応えを感じているけどやっぱりオーケストラの魅力を広めたいというのが大きい。
それで、この春にO.E.Tという新しい室内オーケストラを東京で仲間たちと立ち上げたんだ。
名前の意味はオーケストラ・アンサンブル・東京っていう名前の頭文字をとったもので、「クラシック音楽の入口を開くカギとなるオーケストラ」として、今後東京を拠点に活動していく予定。
早速この夏の7月20日には結成記念公演"Opening"を、渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールにて開催する事にした。
プログラムはオール・ベートーヴェン。
演奏する曲全てをベートーヴェンの作品に絞って、さらに同じ大学で勉強する最高のソリスト陣を迎えることにしたんだ。
このオケはメンバー全員が20代っていうのもひとつの特色だと思ってる。
若いエネルギーって自分で言うのも変だけど、きっとベートーヴェンにはぴったりだと思うんだよね。
僕が前に書いた第九の超訳の記事じゃ無いけど、音楽のスパークが起きるんじゃないかな。
aoi-muzica.hatenablog.com
でもただ「若いオケがコンサートを開きます。」じゃクラシックの入口を開く事にはならないから、今までのクラシック界に無い新しい手法を取ってみた。
クラウドファンディングでクラシックのコンサートを開く
-新しい手法とは?
蒼生
O.E.Tはクラウドファンディングという形でコンサートの資金を集めることにしたんだ。
クラウドファンディングの良いところは、不特定多数の人に僕らを知ってもらうきっかけを作れる。
それもクラシック界の外の不特定多数の人たちにね。自分らの活動のスタートにはこれがぴったりだと思った。
((クラウドファンディングとは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す))
まあ正直不安も大きいよ、結構でかい賭けだし。
23歳になりたての若造には無謀な挑戦だって思う人も多いと思う。
ビジネス経験なんてもちろん無いし、知名度も皆無だし、人脈も多いとは言えない。
それでも今の自分にできる事で、1番可能性があると思った。それで今回、O.E.Tの命運をクラウドファンディングに賭けてみようと思ったんだ。
チケットも今はこのクラウドファンディングサイトのリターンとしての販売のみだから、本当に斬新すぎる試みかも知れないけれどやっぱり何かを変える事にはリスクは付き物だからさ、頑張るよ。
そしてこのインタビュー記事を見つけてくれたあなたが、こんな長い記事を懲りずにここまで読んでくれているあなたが!
僕らのプロジェクトサイトを覗いてくれて、共感してくれて、パトロンになってくれたら、本当にこんなに嬉しい事は無いです。
僕らと一緒にクラシック音楽の入口を開いて欲しいんです。
それでもし「クラシックちょっと聴いてみたくなったな」と思ってもらえたら、本当に気軽に、僕らの公演に遊びに来てください。
ドレスコードなんて無いからTシャツ、ジーンズ、サンダルでも全然大丈夫ですから!笑
凄腕若手プレイヤーが集結!東京からクラシックをアツくするオーケストラ計画! - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
【公演概要】
O.E.T結成記念公演"Opening "
出演者
ゲストヴァイオリン奏者: マキシム・ミシャリュク
チェロ奏者:三井静
指揮者/ピアノ奏者:大井駿
指揮者: 水野蒼生
会場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール(渋谷駅から徒歩5分)
2017年7月20日木曜日18時30分開場 19時開演
全席自由 一律3000円
主催 O.E.T
お問い合わせ orchestra.ensemble.tokyo@gmail.com
O.E.T公式サイト http://orchestra-ensemble.tokyo/
twitter O.E.T (@o_e_tokyo) on Twitter
Instagram O.E.T (@orchestra.ensemble.tokyo) • Instagram photos and videos
追記
O.E.Tオープニングコンサートは大盛況のうちに無事終演いたしました。
7月にはクラウドファンディングが成功、遂にO.E.Tが集まり4日間12時間ほどのリハーサルを終え、当日のホールには一階席ほぼ満席のお客さんと、鳴り響いた僕らのベートーヴェン。
公演は大成功、O.E.Tは最高のオープニングを飾る事が出来た。簡単に書けばこんなもんだけれど、この半年間の中、どれだけのストーリーがあっただろう。
いずれそれは本にでも書いてやりたいと思っているけれど(笑)
とにかく本当に命掛けの半年間だったんだ。
だからこそ公演が成功した事が本当に嬉しかったし、終演後のオケの皆んなとお客さんの表情を見てその成功が自己満ではないことも分かって涙腺が緩んだ。
O.E.T結成記念公演"Opening" - 蒼い日々の中で
クラシック界で新しいこと
齋藤
僕たち若い世代がリスクを負いながらも新しいことに挑戦していかない限り、クラシックの客層はずっと今のままだと思います。
企業でない僕たちがそれをするには資金が必要です。応援してくださるという方がいらっしゃいましたらぜひパトロンになってあげてください!!
僕は今回この演奏会に参加するわけではなく、知り合ったばかりの蒼生からこの話を聴いて応援したくてこの記事を書きました。
学生なので金銭的な援助をすることはできませんがこういうことならできます。
パトロンになることはできないという方でも、ぜひSNSなどでの拡散に協力してあげてください。
ブロガーのみなさん、もしおもしろいって思う方がいらっしゃいましたぜひ記事で紹介してあげてください。
僕はライターというわけではなくただの音大生なのでそこまで素晴らしい文章を書けたわけではありませんが、彼の魅力は充分に伝わったと思います。
(ちなみにここまでに1万字以上w )
蒼生のドラマチックな人生を読んでおもしろそうなやつだなと思ってくれたあなた!ぜひ応援してあげてくださいね。
水野蒼生 ドイツ・グラモフォンからCDデビュー
なななんと水野蒼生が、ウィーンフィルやベルリンフィルの世界最大のレーベルであるドイツ・グラモフォンからクラシックDJとしてCDデビューしました!!!
各トラックには蒼生が厳選した音源が組み合わさって一つの曲のようになっています!
”We will classic you"
というタイトルにふさわしく、とても素晴らしい、今までにないミックスになっています!
おすすめ!
蒼生のメッセージ。彼はブログもおもしろいのでおすすめです!
彼は絶対に大物になる!という僕の直感のもとインタビュー書いたりわずかながら応援していましたが、思った通りどんどん大物になっていっていてとてもうれしいです!!
クラシック・留学記事