移転しました。
バレエを踊る男性というと
女性がふわふわと踊っていて男性はタイツを履いてそれを優雅にサポートする
といったイメージがあると思いますが
男性のバレエは派手でダイナミックでかっこいい
んです。
そういうバレエのかっこいい一面を知っていただくともっと興味がわいてくるかもしれません。
働いている劇場ではロシアということもありよくバレエを上演し、兄がダンサーということもあるので知っている限り紹介していきたいと思います。
僕が働いている”ブリヤート共和国”の”ウランウデ”について - しべりあげきじょう
「海賊」より≪アリのヴァリエーション≫
男性ソロの超有名なソロで、バレエ「海賊」の中で海賊の手下であるアリが場を盛り上げるために踊るシーン。アリは派手なシーンが多いですが全然主役ではありません。
踊っているのはミハイル・バリシニコフです。
Mikhail Baryshnikov ミハイル・バリシニコフ
ミハイル・バリシニコフはソ連出身でアメリカに帰化した20世紀のスターダンサーで、とにかく卓越したテクニックで人々を魅了しました。
熊川哲也さんが憧れの人と言っていますね。見ていてわくわくするような力強い踊りです。
「ドン・キホーテ」よりバジルのヴァリエーション
これは熊川哲也さんの代名詞とも言えるドン・キホーテのソロです。
これもまた回転とジャンプがとんでもないです。たった一分間ですべてを出し切るような踊り。
白鳥の湖 王子のヴァリエーション
熊川さんの動画は全幕から主役ソロだけを切り抜いているところが多いので紹介します。
白鳥の湖は真っ白なチュチュを着た女性たちがずっと踊っているイメージだと思いますが、こんなシーンもあるのです。
白鳥の湖 道化の踊り
白鳥の湖に登場する、場を盛り上げる道化師もアクロバットで魅力的なキャラクターです。
くるみ割り人形 王子のヴァリエーション
こちらも熊川さん。鬼畜な振り付けw
眠れる森の美女 デジレ王子のヴァリエーション
眠れる森の美女は音楽がやたらと壮大なので王子の踊りも劇的です。これは色んなダンサーのまとめ動画。
コッペリアよりフランツのヴァリエーション
ラ・バヤデールより「ブロンズ・アイドル」
こちらはラ・バヤデールというバレエの中に登場する黄金の仏像の踊り。
踊っているのは先シーズンまで僕の働いているブリヤート歌劇場の芸術監督をされていた岩田守弘さんです。
日本人で初めてボリショイ劇場のファーストソリストになった人で、このような個性の強い役を踊られていました。
直接お話しさせていただいたこともありますが、少年のようなバレエの熱い思いとものすごいストイックさをもっていらしゃる方で素晴らしいダンサーです。
ボレロ モーリス・ベジャール
モーリス・ベジャールという振付家によるボレロ。女性が踊るものもありますが、やはりジョルジュ・ドンがおすすめです。
薔薇の精
20世紀のセンセーショナルなバレエ団、バレエリュスのミハイルフォーキンが伝説のダンサー、ニジンスキーに振り付けたものです。 薔薇の精という妖精を男性が踊ることで、優雅ながらダイナミック。踊っているのマニエル・ルグリ。
ペトリューシュカ
「かっこいい」とはまた少し違うかもしれませんが、こちらもかなり個性的なバレエなのでぜひ見ていただきたいです。
ペトリューシュカは20世紀にストラヴィンスキーとバレエリュスのコラボによってニジンスキーが踊った作品です。
若者と死
この曲は2019年のECZのコンサートでやったのでその時に僕が書いたプログラムノートを貼っておきます。
ローラン・プティは、第二次世界大戦後、様々な新しいバレエ作品を創作した。
特に、1946年初演の《若者と死》は当時のフランスの芸術界でもっとも傑出した「事件」と言われた。当時のシャンゼリゼ・バレエ団は、バレエ・リュスに集結した様々なジャンルの一流の芸術家たち とパリ・オペラ座出身の若いダンサー達で構成されていた。
《若者と死》は当時の天才ダンサー、ジャン・バビレのために作られた。
作品の特徴は無言劇であることと、バビレの身体性を生かしたアクロバティックな振付にある。当初は踊りやすいようなジャズ調の曲に合わせた踊りだったが、「偶然的な同時進行性の神秘」と名付けた音楽的実験を試みるという意向により本番直前にバッハの「パッサカリア」に置き換えられた。そのため、ダンサーによる即興的要素が強いバレエ作品であることも特徴である。芸術に悩む若者が死神に翻弄され最後には死を選ぶというこの作品は、ダンサーには若者の心理状態を身体で表現することが求められる。
作品には、まさに「生」の象徴でもある若者の「死」に対する両価的感情、愛と憎しみ、欲望と恐れが表現されている。《若者と死》の「死」についてコクトーはその死を「再生」と捉えていたが、若者の大量死をもたらした第二次世界大戦終戦直後という時代性も考慮すると、死は若者にとって避けることのできない運命、現実と捉えることも可能である。
つまり、戦争直後の若者の絶望や苦悩という現実がこの作品の見えない舞台になっていると考えられる。
そのような今を生きる等身大の若者をバレエ作品に登場させたこと、バレエ音楽ではないバッハの作品をしようしたことが、当時この作品が「新しいバレエ」であった最大の理由といえる。
素晴らしい作品なのでぜひ見てみてください。
ECZ2019 バレエと金管打楽器アンサンブル - しべりあげきじょう
男性のバレエはダイナミック
男性のバレエって本当にアクロバットでダイナミック、フィギュアスケート的な魅力に加えてそこにさらに演技があります。
役になりきりながら、あくまでも美しく高く飛んだり回ったりするわけですね。そこがアスリート的要素がありながらもスポーツと大きく違う点です。
そしてそこが一番の魅力ですね。テクニックだけではなく出てくるときの歩き方や表情、立ち振る舞いに全て演技が入っているわけなんです。
僕は今ロシアの音楽家としてバレエの音楽を演奏することが非常に多く、兄もバレエダンサーとして働いていて自分も子どもの頃はバレエを習っていたのでとても親しみも興味もあります。
子どもの頃はたいして興味もないなか親に連れられてしょっちゅうバレエを観に行っていましたが、今思うとそれがクラシック音楽を好きになったきっかけだったのかなあと思います。
動画を見て少しでも興味を持ったら生の舞台を観に行ってみてください!
【クラシック】ドイツにきて感じた"クラシック演奏会の服装問題"について - しべりあげきじょう