しべりあげきじょう

ロシア国立ブリヤート歌劇場首席トランペット奏者  齋藤友亨のブログ (旧あうすどいちゅらんと)

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【古楽】Susan Willamsのバロックトランペット・オーボエ・ファゴットの講習会

5月の一週目は教授とクルージングにいって1週間みっちりモダンのトランペットのレッスンを受けながらドイツの歴史やメンタリティを学んできましたが、5/23-26で今度はバロックトランペットのワークショップに行ってきました。

ブレーメン音大とオランダのデン・ハーグ音大の教授であるSusan Williams(スーザン・ウィリアムス)です。

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Susan Williams(スーザン・ウィリアムス)

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オーストラリア出身。オーストラリアでトランペットのキャリアを積んでからヨーロッパへ。

Collegium Vocale Gent, Les Arts, Anima Eterna, Musiciens du Louvre, Al Ayre Espagnol, Les Agremens, Elbipolis, Concerto con Anima und Les Amis de Philippeなどのバロックオーケストラで演奏。

トランペットアンサンブル”Clarini”とバロックオーケストラ”Bachischen Collegium Bremen”を主宰。

現在ブレーメン芸術大学及び王立デン・ハーグ音楽院教授。

 


Susan Williams "Anche virtu e belleza" Martinez de la Roca classic baroque trumpet

 

 

オーボエ・ファゴット・トランペット1本という編成

いまでは意外に感じるかもしれませんが、バロック期には2~3本のオーボエとファゴットと通奏低音のOboe Bandにトランペット1本という編成のレパートリーがたくさん存在します。

 

トランペットとオーボエの音がよく混ざること、さらに1本メロディー楽器としてのトランペットが入ることによってキャラクター付けが強くなることなどがあります。

トランペット=王様、要人、神

という役割だったので、トランペットを1人入れることで華やかさだけではなく、音楽にそのような意味合いを付け加えることができたと考えられます。

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【古楽】中世のドイツのラッパ吹きはオーボエもヴァイオリンも必修だった【Stadtpfeiffer 】 - あうすどいちゅらんと

こちらの演奏は弦楽器が入っていますが、古楽器で演奏されています。

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MolterやHertelなどたくさんの作曲家がこの編成で曲を書いています。30~40局はあるそうです。telemannやFaschも。

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これはトランペットとファゴットのデュオです。

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あまり知られていないような名曲がたくさんあるんですね。

古楽を勉強することですとても得られるのは、レパートリーが大幅に広がることもあります。当時の楽器を実際に吹いてみることで見えてくる演奏の仕方もありますし、当時の演奏のスタイルやフレージングを勉強することで音楽の表現の幅が大きく広がると思います。

 僕はヴュルツブルクでHannes Rux先生のもとで勉強しています。

www.tomotrp.com

 

ワークショップの内容

トランペット5本・オーボエ3本・オーボエダカッチャ1本・

ファゴット3本・打楽器

という全員でやるアンサンブルを二曲。

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そしてトランペットは一人一曲コンチェルトを吹かせてもらいました。

僕はGraunというドイツの作曲家のコンチェルト。全く音源もなくてパート譜しかもらっていなかったので初日はよくわかりませんでしたが、とてもいい曲でした。

 

まず全員の曲を合わせてからコンチェルトを全曲やり(全て全員で聴講)、その後はトランペットアンサンブルやデュエットをして、一日の最後に個人レッスン。既にバテバテでしたが。笑

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そんな毎日が3日間続いて、最終日はSchönbeck城というところで演奏会でした。お城といってもとても小さくてかわいらしいところで、海洋博物館のようになっていました。

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しかしとてもいい天気だったのでせっかくだから野外でやろう!ということになり、庭で演奏をすることになりました。

ドイツでは野外演奏をするのにも役所の許可が必要なのでそれには時間がかかりましたが無事に開催することができました!

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このお城はブレーメンの街からは車で15分くらい行った郊外なのですが、それにもかかわらず数十人のお客さんが聴きに来てくれました。

これは本当にドイツならではで、ドイツの好きなところです。

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実はこれが初めてのバロックトランペットのソロの本番でした。

僕がソロを吹き終わったときに指笛を吹いてくれたり、”よかったよ!!”と親指を立てくれるおじさんがいたり、とても嬉しかったです。

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古楽は不完成で演奏がとても難しい楽器を使ってすごくシンプルな音楽をやるので、本当に音楽的なアイデアをもって演奏しないと聞くに耐えない演奏になってしまいます。

モダンよりも音を出すのが難しいはずなのに、バロックトランペットを吹くときのほうが音楽のことだけを考えられていますし、演奏もとても楽しいです。

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Susan Williamsのレッスン

https://www.instagram.com/p/BjRfuZahUm_/

in natural trumpets 

彼女にとても言われたことは

”more easy" 

というとてもシンプルなことでしたが僕にはすごく助けになりました。

個人レッスンは短い時間でしたが、一緒にアンサンブルやデュエットをしたり、先生が吹いているのを聴いていてとても感じたことは

「ものすごく楽に吹いている」ということでした。

パワーやたくさんの息を使わずに最小のエネルギーでリコーダーのようにHigh Dを吹く先生…。

 

一緒に吹いているうちに僕もどんどん力が抜けていって、オーボエとのアンサンブルも音が混ざるようになっていって不思議でした。

 

”裏声で吹く”という感覚がよくわかった気がしました。

 

フランスバロックのスイングのようにドゥダドゥダ吹くニュアンスだったり、フレーズのとり方も、今勉強していることと基本的には同じスタイルでも、いろんなやり方があるということを知れました。

 

音楽的にも奏法的にもすごく実りのあったワークショップになりました。

 

最後に先生に

「音もとても良いし、何より4日間で毎日どんどん成長していったのが素晴らしかったわ」といってくださったのが嬉しかったです。

 

イタリアでプロで活動している人や、ブレーメンのバロックトランペット専攻の人達とも仲良くなってたくさん話せたのも楽しかったです。

小さな業界なので、これからもどんどんワークショップやマスタークラスに参加していきたいと思います!

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