ドイツの音大に留学するのにかかる学費は?
留学を考えている人にとって
「ドイツの音大に留学するにはどのくらいの費用がかかるんだろう?海外は学費も高いというしお金がかかりそう…」
というのは大きな壁になります。
そうやってよく調べる前から断念する人も多いと思います。
ですが
ドイツの音大の学費は外国人でも無料の州があります。
外国人でも無料というのは信じられないことです。そのため特にアジアから人が殺到しています。
日本や韓国で私立の音大を卒業するためには800~1000万円ほどかかるので
19歳で学部からドイツに来る人も増えています。
ちなみに僕も学部から入学しました。
ヴュルツブルク音大を卒業しドイツ生活が終わりました - しべりあげきじょう
特に韓国人は多く、受験生の60%は韓国人なんじゃないかというくらいにいます(楽器を問わず)
優秀な人もとても多いので、韓国人学生はたくさんいます。
しかし最近外国人の増加と、アジアからの留学生のほとんどが富裕層であることからEU外からは学費をとる州と大学も出始めました。
基本的に年間3000~4000€です。
ちなみに僕の先生が学生だった1960年代は、全ての学生が今でいう年間3000€ほどの学費を払っていたそうです。そのため院に進学する人も少なく、卒業を先延ばしにして学籍を伸ばすといったこともされていたそうです。
ドイツの音大一覧
ドイツの音楽大学25校は全て国立です。連邦共和国なので正確に言うと州立ですが。
カールスルーエ音楽大学(カールスルーエ)
ロストック音楽・演劇大学(ロストック)
リューベック音楽大学(リューベック)
ハンブルク音楽・演劇大学(ハンブルク)
ハンブルク音楽院(ハンブルク)
ベルリン芸術大学(ベルリン)
ベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学(ベルリン)
フランクフルト音楽・表象芸術大学(フランクフルト)
ミュンヘン音楽・演劇大学(ミュンヘン)
シュトゥットガルト音楽・演劇大学(シュトゥットガルト)
ケルン音楽大学(ケルン)
フライブルク音楽大学(フライブルク)
フェリックス・メンデルスゾーン音楽・演劇大学(ライプツィヒ)
ロベルト・シューマン音楽大学(デュッセルドルフ)
ヴュルツブルク音楽大学(ヴュルツブルク)
ヴァイマル・フランツ・リスト音楽大学(ヴァイマル)
ハノーファー音楽大学(ハノーファー)
デトモルト音楽大学(デトモルト)
ミュンスター音楽大学(ミュンスター)
トロッシンゲン音楽大学(トロッシンゲン)
赤字の大学が学費がかかるところです。(2019年現在)
ドイツの音大の施設費
日本の私立の音大では大体年間に50万円ほど施設利用費、拡充費が取られます。(これと授業料150万円ほど)
ですがドイツは取られません。
ドイツの大学に入るとゼメスターチケットという定期を買える
ドイツで大学生になると、その街を含めた一定の地域まで交通機関が乗り放題になるチケットが買えます。(学生証と同じになっていることが多い)
抜き打ちの検査官が来た時も学生証を見せればOK
さすがにこれはタダではなく
ヴュルツブルクの場合は1学期(半年)あたり74.5€です。
有効範囲はほぼヴュルツブルク内のみ
ベルリンの場合は、街が大きいことと使用できる範囲が広いので高めで
1学期250€程月に5000円位です。
これは大学により異なり、範囲がものすごく広いところもあります(州全部行けるとか)
日本で神奈川から東京まで毎日通っていたときは月に13000円ほどかかっていたのでこれも破格です。
何より市内どこでも乗り放題というところがいいです。
生徒会費
ヴュルツブルクでは一学期あたり50€の生徒会費的なものがかかります。
まあこれは大体どこの大学も似たようなものでしょう。
ヴュルツブルク音大の学費の合計
ヴュルツブルクで払っている学費は124.5€×2で
年間249€です。
日本の国立大学も学費がどんどん上がっており、東京芸大でも年間100万円ほどかかるのでこれは破格。
ブログ収入で学費払えています!
ドイツの音大の講師陣は超一流
僕が習っていた先生は元フランクフルト放送響の首席奏者(フリードリヒの前任)Helmut Erb教授。
【トランペット】Helmut Erb(ヘルムート・エルプ)教授の人生を語る【インタビュー】 - しべりあげきじょう
室内楽のレッスンを受けていたのは最も有名なブラスアンサンブルのひとつ、German BrassのHeckmann教授です。
ベルリンの音大ではベルリンフィルの人が多く教えていますし
超一流の人たちの元で勉強できます。
講師も大半は大きいオーケストラに所属している人ばかりです。
マスタークラスを受けたら高いと1回何万円もかかる人たちのレッスンをタダで受けられるんです。
そりゃあみんなドイツに来ます。
教授の選考方法も公平で、オーディションがあります。
ドイツの音大の教授は公開オーディションによって決められる - しべりあげきじょう
音大の教授は年間5か月が休暇で、ゼメスター中も週に2回学校に来ればいい程度なので、ソリストなどがなりたがりますね。
プライベートレッスンでお金を取らない人も多い(トランペットの場合)
受験をする際に事前に先生にコンタクトをとって演奏を聴いてもらうのが一般的で
大抵の先生はレッスンもしてくれます。(一曲きいて、もういいよね!って帰る先生もいますが笑)
しかしその時は普通はお金をとりません。(トランペットの場合!)
あくまでもVorspiel(演奏を聴いてもらう)なのでレッスンは先生の好意ということが多いです。
レッスンしてくれた場合
「レッスン代はいくら出せばいいですか?」と聞いても失礼ではありませんし
いくらと言われたら、現金を直接渡しても大丈夫です。
前にBoo Nilsonのレッスンを受けた時に封筒に入れたお金を渡したら
「ん?なにこれ?ラブレター?ww」
って不思議がられました笑
僕はこうしてとにかくいろんな先生のレッスンを受けまくりその数は20人を超えます。
バイエルン国立歌劇場首席奏者Andreas Öttlのレッスンを受けにミュンヘンへ - しべりあげきじょう
ベルリン国立歌劇場ライナー・アウアーバッハ先生のレッスン 基礎・オケスタ - しべりあげきじょう
ドイツの生活費はとても安い
物価の高いイメージのあるヨーロッパで心配なのは生活費ですね
【海外】食品や生活必需品は安いドイツの物価 - しべりあげきじょう
ここにまとめてあります。
生活用品や食料品は日本よりも安く外食しなければほとんどお金はかかりません。
ドイツの家賃 寮は基本格安
ドイツの家賃も気になるところですが、全然高くありません。
特にベルリンは首都にしては安く
学生寮に住めば月に光熱費水道ネット全部込みで3万円以下のところもあります。
ヴュルツブルクはもっと安い。
この記事に家賃の詳細がまとまっています。
【ドイツの家賃】相場をひと目で把握できる地下鉄家賃マップ~ベルリン・デュッセルドルフ・フランクフルトなど~ - しべりあげきじょう
ドイツは学生に対する恩恵がすごい
ドイツはどの学科に行っても大学の学費は無料で、大学に行くまでも学費は一切かかりません。
教育費に費やされる税金の割合が大きく、そこは日本とずいぶん違います。
これは昔の政治の大きな転換の時にそうなったようですね。外国人にまでというのはいくらなんでも気前が良すぎる感じもしますが。笑
ベルリンフィルが1000円で聴ける
日本でベルリンフィルなどを聴くとチケットが何万円もしますがドイツではそんなことはありません。
ベルリンフィルの立ち見は1000円ですし、オペラなども学生ならすべて1000円ほどで聴けます。ベルリンにいた頃は聴きまくっていました…
ドイツに戻ってからの2ヶ月間 バーデンバーデン音楽祭 ベルリンフィル×ペトレンコ - しべりあげきじょう
バンベルク交響楽団やミュンヘンフィルなどを事前にチケットを買っても3000円もしません。
たくさんの巨匠の演奏を本当にたくさん聴きました。
日本にはあまりないタイプの仕事が多い
ドイツはもちろんキリスト教の国なので、クリスマスとイースターのシーズンは宗教行事に絡んだミサやオラトリオなどの演奏会が各地で行われます。
その数がとても多いため、基本的に学生で構成された寄せ集めのオーケストラで演奏することが多いので若い学生にもたくさん仕事が回ってきてありがたいです。
【留学】秋冬は音楽家の稼ぎ時。レクイエムの"むっけ" - しべりあげきじょう
クリスマスオラトリオの仕事 ほとんど吹くところなくてもギャラは同じ - しべりあげきじょう
ベルリンでW.O. Junge Philharmonie Beriln - しべりあげきじょう
学費がかかっても日本や他の国よりドイツの学費はずっと安い
ドイツの教授の年収はかなり高いので、そこから計算すると学費を無料にしているためにものすごい金額の税金が使われています。
そこにあまりにたくさんの裕福な外国人がきたらドイツ人としては学費を取るべきだというのは当然だと思います。
それでも日本の国立大より安いので、学費を取るようになっても多くの外国人留学生がきています。
今のところはまだ数校だけが有料でほとんどの大学が無料ですが、今後は学費を取る大学がどんどん増えていくと思います。
1000€の高級マンションに住んでいるアジア人の留学生の学費をドイツの税金で負担するのはおかしい!
という意見が多いのは当然のことです。
ドイツ留学体験談、インタビュー