しべりあげきじょう

ロシア国立ブリヤート歌劇場首席トランペット奏者  齋藤友亨のブログ (旧あうすどいちゅらんと)

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ドイツの音大の教授は公開オーディションによって決められる

ヴュルツブルク音大の新しいホルンの教授のオーディション

前の教授が引退してからしばらく新しい教授が来るまでに間が空いてしまっており、ここ数年は非常勤のような形でGerman BrassのWolfgang Gaag氏が教鞭をとっていました。

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しかしGaag先生ももう70歳ということでかなり無理をなさっていたことと思います…

 

そしてようやっとホルンの新しい教授の選考オーディションが開かれえることになり、2017年秋から新しい教授が来ます。

 

 

ドイツの国立音楽大学の教授の地位

ドイツには十数校の国立の音楽大学があり、各楽器には教授がいます。

もちろん国立大学の教授ということなので社会的な地位もとても高く、自分の公式な生徒を10人以上持てて、さらには年収も教授職だけで月収100万くらいなのでなりたい人はたくさんいます。

 

ドイツの音大教授の選考方法

日本の大学の場合は

大学院へ進学→講師→教授

という内部での動きが大きいイメージですが(音大は必ずしもこうではありませんが)ドイツはそういったしがらみは一切なしで、募集をだして集められた候補者の中からオーディションによって選考されます。

 

まず応募してきた候補者の中から、誰をオーディションに招待するのかを教授たちが会議によって決めます。

大体の目安としては

・Aクラスのオーケストラの首席であること

・国際コンクールなどの受賞歴

・教育者としての実績

といった感じです。

 

Aクラスのオーケストラとは、オーケストラの給料と楽団員の数によってSABCDにランク付けされたものののことです。

ベルリンフィル、バンベルク交響楽団やフランクフルト放送響、ライプツィヒゲヴァントハウス、などが挙げられます。

 

そしてプロフィールによる選考の結果、10人ほどに招待状が送られます。

 

オーディションの審査員には現教授ははいれない

オーディションの審査員は、弦楽器・木管楽器・金管楽器・打楽器から1~2名ずつの教授と、他大学のその楽器の教授が入ります。

今回でいうとマンハイムとフランクフルトの教授が来ました。

 

そして公平のために現教授は審査員にははいりません。

 

ここがほんとうに公平ですごいなと思いました。

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オーディションの内容はソロとレッスン

オーディションはまず45分のソロを演奏します。時代別でいくつか。

 

そのあとに2人をレッスンします。

1人は学部の若い生徒で主にソロ曲

もう1人は大学院生の生徒でオーケストラスタディ(オーケストラの中でのソロなどの断片)

をやります。

 

演奏の実力・レッスンの内容などを教授陣がみて判断します。

審査員の教授陣はどちらも最高レベルの超プロ集団… 緊張することでしょう…

 

そして一番かわいそうなのはそのレッスンを受講する生徒w

 

10人のめちゃくちゃ偉い教授達の前でレッスンをうけなければならないという状況…そしてレッスンする方の先生も緊張している笑

 

公正なシステム

このような取り組み方を見ていると、本当に公正な審査ということがよくわかります。教授という職がそれほど重要な立場と認識されていることも。

 

そして新しい教授が来た場合、今の講師の先生たちは基本的に解雇です。

ということでクラスが本当に一新されることになります。

 

あまりレベルが高くなかったところも、教授が変われば今までは受験に来なかったような人材も集まったりして一気に変わります。

 

ドイツの場合、”どの音大が一番いい”というようなものはなく”この大学のこの楽器のこの教授のクラスがいい”という判断基準なんですね。

 

まだ審査は終わっていませんが、新しい教授が来るのが楽しみです。

 

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